山口 和敏

熊本を中心にテレビディレクターとして30有余年。哲学を専攻。今も「人間とは…」「生命とは…」といった空恐ろしいことを問い続けながら、幅広いジャンルの番組制作に携わっています。 およそ2年前、「上顎洞がん」というけったいな希少がんに罹患し、余命6か月の宣告を受ける。 抗がん剤治療や放射線治療、12時間に及ぶ手術といったほぼフルコースのがん治療で右目を失うという過酷な闘病の中、脳のわずかな場所が生み出す絶望や苦悩にも関わらず、70兆個にもおよぶ肉体が持つ、生命の尊さと力強さをひしひしと深く感じることができた。これらの経験がいまの私の制作における大きな動機となっています。

柔らかくてかわいいもの

エッセイ

入院生活の私的心得

2021/7/28    

 同じ状況の患者さんが二人いて、同じ治療を受けていたとしても、入院中の過ごし方ひとつで回復のスピードは多きく変わるようです。  逆に絶対にやってはいけないことは、女性ナースへのセクハラやパワハラ。つい ...

アイスクリーム

エッセイ

続・ものを食べるということ

2021/7/25    

 口からの食事になって2日目。刻んだ食材にとろみをつけた軟食をいただきます。課題であった飲み込みも問題なく、食事はばっちり、これで退院が一日近づいたと気が緩んでしまったのがいけなかったかもしれません。 ...

病院食

エッセイ

ものを食べるということ

2021/7/24    

 手術から2週間、いよいよ口でものを食べるところまでやってきました。もちろん通常の食事ではなく、細かく砕いた流動食というものです。この流動食がよくできていて、細かく砕かれる前になんであったのかがちゃん ...

はまじい

エッセイ

きょうもひと浴びいきましょう

2021/7/21    

 海辺に住んでいることを知った私が後に「ハマジイ」と呼ぶことになるそのおじいちゃんは、廊下の真ん中でちょっともじもじしながら私がくるのを待っていました。  「(放射線に一緒に行こう)」  少し聞き取り ...

談話室の置物

エッセイ

頑固なおじさん

2021/7/20    ,

 手術から間もなく2週間。まだ痛みはあるものの、薬でしっかりコントロールできていて、体調などはばっちり。仕事も順調にこなしています。  こうして余裕が出てくると、病棟で繰り広げられる楽しい人間模様が目 ...

サムズアップ

エッセイ

がん治療の私的心得

2021/7/19    ,

 「悪性腫瘍が見つかりました。これから検査を受けて頂き、治療方法などを話し合っていきたいと思います」  気の利いた医者であれば、  「一緒にがんばりましょう」のひとことがあるかもしれません。このように ...

眼帯

エッセイ

メタモルフォーゼ

2021/7/16    ,

 人は多くの時間を身だしなみに費やします。最近では男性も女性も関係なく、鏡の前で髪や顔を触っている時間が長いんだそうです。  実はこれ、人として当然のこと。身だしなみは他人とのコミュケーションを必須と ...

つかむ

エッセイ

つかみ取れ!

2021/7/14    

 病気の治療はもちろん病のとの戦いであるわけですが、痛みとの戦いであるとも言えます。手術のあとは痛い。とにかく痛い。  私は人一倍痛みに弱いようで、とにかくズキッの「ズ」だけでナースコールを押してしま ...

福ちゃんとめいちゃん

エッセイ

緊急ではない緊急手術

2021/7/11    ,

 7月8日木曜日、上顎洞がんの手術を行いました。上顎洞というところはとても複雑な形をしていて手術には時間と技術を要します。眼球、骨、上顎と複雑に入り組む組織にどのようなアプローチを行うかという医療ドラ ...

準備するもの

エッセイ

夜空を今夜も有難う

2021/7/6    

 上顎洞に新しい腫瘍が見つかり、手術することになりました。今年2月の手術では上顎洞の一部取り除く小規模なものだったのですが、今回は目玉から上あごまでを取り除いて、ぽっかりあいたところにお腹の肉を詰め込 ...