山口 和敏

熊本を拠点に、テレビディレクターやライターとして30年以上活動してきました。 報道からバラエティ、ドキュメンタリーまで幅広い番組を手がけてきたのですが、2019年に「上顎洞がん」という聞きなれない希少がんにかかり、余命6か月を宣告されました。 その後、抗がん剤、放射線、そして14時間におよぶ手術で右目を失いながらも、「どうせなら、この経験も楽しんでしまおう」と開き直り、今こうしてブログを書いたり、YouTubeで思いを発信したりしています。 今は、ビジネスコンテンツライターやスピーチコンサルとしても活動しつつ、がん患者の「仕事と治療の両立」や「前向きな生き方」に役立つ発信をつづけています。 最近は写真にも夢中です。片目になってから、かえって世界の“本当の表情”が見えるようになった気がしています。Leica片手に、光と影の中に生きる力を探す毎日です。 この先は、クラウドファンディングで出版にも挑戦する予定です。 病気になっても、失っても、人生は終わらない。 そんな希望を、少しでも誰かに届けられたらと思っています。

エッセイ

たんぽぽ虫と睡眠

2021/9/23    , ,

「あ”あ”、だすけてええ、あ”あ”ぁ」 草も木も眠るといわれる午前2時半。怪談やオバケが出るのも、だいたいこの時間。いわゆる丑三つ時。 なんとなく目が覚めて、水でも飲もうかとぼんやりしていたら――隣か ...

エッセイ

遺伝子のささやき

中学校の体育教師だった父方の祖父は、町の人たちから「ライオン」と呼ばれていました。常に生徒に吠えていたからです。直接その声を聞いたことはありませんが、ライオンというくらいですから、「ガオー」に近かった ...

my face

エッセイ

頬から腹毛がはえます

2021/8/31    , ,

顔の半分が麻痺していると、当然、口の半分もきれいに麻痺しています。で――口が麻痺していると、食事中はどんなことになるかというと、結構シュールで、ちょっと笑えることになります。 麻痺している右の口からは ...

黒糖フクレ

エッセイ

術後せん妄について

2021/8/24    ,

「右上顎拡大全摘」「右頸部郭清」「腹直筋皮弁再建」「気管切開」 先月、7月8日に私に行われた手術の正式名称です。改めて文字にして並べてみると、ゴツゴツしていてなかなかの迫力。もしかして手術開始時にこれ ...

白キンカチョウのめいちゃん

エッセイ

眼と歯がなくなると浮気の心配はなくなるのか

2021/8/17    

 がんになると、多くのものを失う。……と思いきや、実は、得るものも多い。 失ってしまったものに囚われなければ、意外とプラスは大きいのです。 いきなりですが、お金の話から。 40歳を過ぎたら、がん保険に ...

アメを舐めるパートナー

エッセイ

ものの食べ方について思うこと

2021/8/12    

食事に苦労しているせいか、以前より「ものの食べ方」に興味が出てきました。 ふと思ったのですが――食べることと出すことって、人間にとって同じくらい大切なはずなのに、なぜか「出すほう」は隠して、「食べるほ ...

仕事を手伝う福ちゃんとめいちゃん

エッセイ

焦らず、慌てず、諦めず…でも

2021/8/11    

小鳥と暮らしています。 以前、スズメを保護していたことがあり、そのときの可愛さが忘れられず、小鳥を飼うことが長年の夢でした。 鳥のおもちゃを買ったり、フエルトの小鳥をバッグに付けたりして、その思いをご ...

石器

エッセイ

病気をめぐる言葉の力

2021/8/6    ,

病気をめぐる医者との会話で、「医者はまずリスクを語る」ということを、あらかじめ知っておくべきです。 なぜなら、そのことを知っているだけで――余計な心の沈み込みを、ほんの少しでも減らすことができるからで ...

わたし

エッセイ

怪物の嫉妬について

2021/8/5    

鼻からの管を通した食事を卒業し、お粥が食べられるようになったころ、「こんな美味しい食べ物が世の中にあったのか!」と感動すら覚えていたのに、慣れてしまうと―― 「こんな水浸しの米ばっかり、食えるか!」 ...

ふく

エッセイ

退院と手術跡を食べるキンカチョウの話

2021/8/2    ,

 退院しました。 当日は、パートナーが仕事を休んで駆けつけてくれました。目がなくなり、つぎはぎだらけで、パンパンに腫れあがった顔を見たパートナーは、予想通りの爆笑。しゃべるとさらに大爆笑でした。 「お ...