エッセイ

余命6か月と言われたら

雪だるま

 40代後半、九州で放送作家をしています。思い掛けずがんを患いました。がんになった自分がいま経験していることや感じていること、楽しんでいること(これが一番多いかな)を書くことで、大きな不安の中で生活している人が少しでも心安らかになってくれたらいいなと思いブログを始めました。

 あ、何か特別な治療をしているわけではありませんし、がんになったからといって何か特別な日々を過ごしているわけではありません。そういう事例をお求めの方には役に立たないブログだと思われます。どっちかと言えば、だらだらと過ごしているほうなので、そんな毎日や治療の中での出来事や出会いを綴っていきたいと考えています。

 病歴を簡単に紹介します。2019年の10月2日に上顎洞にがんが見つかり、その後の検査で全身への転移が見つかりました。それより前は痛風よりも大きな病気などはしたことがありません。杖をつきながら取材したこともありましたが、それはいつか書いてみようかな。ともあれ、放射線と抗がん剤の治療をしたものの根治には至らず、2020年の3月4日に余命6か月を宣告されました。それで今日が2021年の7月1日なので、ちょっとネガティブな医者の予想に反して元気に生きています。今は、日本の至宝、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑医学博士が開発した免疫治療(なんと保険診療)を受けています。先日、上顎洞に新たながんが見つかったため、間もなく手術を受ける予定です。

 放射線の影響で片目が見えなくなり、今年2月の手術で上唇の片方がつり上がっているだけで、仕事も以前と変わらずこなし、毎晩のお酒も、変形した上唇のせいでちょっとこぼれることもありますが美味しくいただいています。

 がんは再発しているものの、元気に過ごすことができている今の状態は、宣告された瞬間からこうなるだろうと思っていたように思います。というか、あまり深刻には考えていなかったというのが正直なところです。でも、もしかしたらそれがいいのかも、なんて思ったりもしています。

 がんと共に生きる滑稽な日々、そう!その表現が一番しっくりきます。「がんと生きる滑稽な日々」をこれから書いていこうと思っています。よろしくお願いします。

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山口 和敏

熊本を中心にテレビディレクターとして30有余年。哲学を専攻。今も「人間とは…」「生命とは…」といった空恐ろしいことを問い続けながら、幅広いジャンルの番組制作に携わっています。 およそ2年前、「上顎洞がん」というけったいな希少がんに罹患し、余命6か月の宣告を受ける。 抗がん剤治療や放射線治療、12時間に及ぶ手術といったほぼフルコースのがん治療で右目を失うという過酷な闘病の中、脳のわずかな場所が生み出す絶望や苦悩にも関わらず、70兆個にもおよぶ肉体が持つ、生命の尊さと力強さをひしひしと深く感じることができた。これらの経験がいまの私の制作における大きな動機となっています。

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