山口 和敏

熊本を拠点に、テレビディレクター・ライターとして30年以上活動。 2019年、希少がん「上顎洞がん」で余命6か月を宣告される。抗がん剤、放射線、14時間におよぶ手術を経て右目を失ったが、「どうせなら楽しんでしまおう」と開き直り、ブログとYouTubeで発信をつづけている。 現在は動画制作コンサルおよびビジネスコンテンツライターとして活動しながら、がん患者の「仕事と治療の両立」や前向きな生き方を届けることをライフワークにしている。 片目になってからLeicaを手に取り、光と影の中に生きる力を探す写真の世界にも夢中になった。失ってはじめて、世界の"本当の表情"が見えてきた気がしている。 クラウドファンディングによる出版にも挑戦予定。 病気になっても、失っても、人生は終わらない——その希望を、誰かに届けたい。

エッセイ

藁をもすがる首に、奇跡が起きた日

2026/6/29  

首が、動かない。 正確には動く。でも、動かそうとすると痛みが走る。油断すると、ぎゅっとつってしまう。 リンパ郭清という手術を受けた人間には、よくある話らしい。首のリンパ節を取り除くとき、周囲の筋肉や神 ...

エッセイ

鉄骨の幾何学と、それぞれの物語

2026/1/11  

駅のホームというのは、不思議な場所だ。 そこは単なる通過点にすぎないのだけれど、電車が来るまでの数分間、僕たちは「待つ」という行為を共有する同志になる。言葉を交わすわけでもなく、互いに干渉することもな ...

バスの中

エッセイ

スポンジボブと左足の付け根と、愛する人の笑顔

2025/7/13  

「目が覚めると、僕は虫になっていた。」 カフカの『変身』の冒頭のようだけれど、僕の場合はもう少し現実的で、目覚めたら動けなくなっていたという、最近のお話だ。 少しでも動こうとすると左足の付け根に激痛が ...

エッセイ

意味を失った世界で、私はカメラを手に取った

──見ることと存在をめぐる意識の再生 世界は、私たちが思っている以上に、脆く、そして美しい。 最近、私は「写真」と「哲学」、そして「命」という三つのテーマを、ひとつの線で結ぼうとしています。 きっかけ ...

エッセイ

「その顔で取材するの?」と言われた日 ——堂々と生きるということ

経営者仲間とビジネスについて語り合う機会がある。この日は、歯に衣着せぬ物言いと、ちょっぴりシャイな笑顔が魅力の男性経営者との会話で感じたことだ。 この経営者と直接向き合って話すのは初めてで、ビジネスの ...

エッセイ

歯の本数と優しさの不思議な関係

我が家には二種類の歯磨き粉がある。ひとつは、某有名ブランドのホワイトニング効果があるという高級歯磨き粉。もうひとつは、ドラッグストアで「本日限り!」と赤札付きで山積みにされる庶民派歯磨き粉だ。 もちろ ...

エッセイ

瞬間の物語:写真が教えてくれる愛のかたち

桜の花びらが舞う中、赤ちゃんを高く掲げる父親の顔には、何とも言えない喜びが広がっている。そして赤ちゃんは——そう、赤ちゃんは何が起きているのかまったく理解していない。 「パパ、なんで僕を空中に投げ上げ ...

エッセイ

命の物語が交錯する車両の中で

市電に乗って、ふと思った。この日、この時間、この電車に乗り合わせたこと自体が奇跡だ。 がんが見つかり、自分の命が尽きるかもしれないと考えた瞬間、まず驚いたのは、過去から連綿と受け継がれてきた命の尊さだ ...

エッセイ

写真が教えてくれること

余命半年を告げられたとき、思い残すことがないようにしようと思った。そして、そこで挑戦を始めたのが、写真だった。 20代のころ、僕は写真に熱中していた。ファインダー越しに世界を見るのが楽しくて、時間を忘 ...

エッセイ

何気ない日常の、かけがえのなさ

日差しがあたたかい午後、近所を歩いていると、仲睦まじく散歩をする老夫婦の姿が目に入った。 男性が少し前を歩き、女性が少し後ろをついていく。ずっとそうしてきたのだろう。並んで歩いて会話を楽しめばいいのに ...