山口 和敏

熊本を拠点に、テレビディレクターやライターとして30年以上活動してきました。 報道からバラエティ、ドキュメンタリーまで幅広い番組を手がけてきたのですが、2019年に「上顎洞がん」という聞きなれない希少がんにかかり、余命6か月を宣告されました。 その後、抗がん剤、放射線、そして14時間におよぶ手術で右目を失いながらも、「どうせなら、この経験も楽しんでしまおう」と開き直り、今こうしてブログを書いたり、YouTubeで思いを発信したりしています。 今は、ビジネスコンテンツライターやスピーチコンサルとしても活動しつつ、がん患者の「仕事と治療の両立」や「前向きな生き方」に役立つ発信をつづけています。 最近は写真にも夢中です。片目になってから、かえって世界の“本当の表情”が見えるようになった気がしています。Leica片手に、光と影の中に生きる力を探す毎日です。 この先は、クラウドファンディングで出版にも挑戦する予定です。 病気になっても、失っても、人生は終わらない。 そんな希望を、少しでも誰かに届けられたらと思っています。

エッセイ

意味を失った世界で、私はカメラを手に取った

──見ることと存在をめぐる意識の再生 世界は、私たちが思っている以上に、脆く、そして美しい。 最近、私は「写真」と「哲学」、そして「命」という三つのテーマを、ひとつの線で結ぼうとしています。 きっかけ ...

エッセイ

「その顔で取材するの?」と言われた日 ——堂々と生きるということ

経営者仲間とビジネスについて語り合う機会がある。この日は、歯に衣着せぬ物言いと、ちょっぴりシャイな笑顔が魅力の男性経営者との会話で感じたことだ。 この経営者と直接向き合って話すのは初めてで、ビジネスの ...

エッセイ

歯の本数と優しさの不思議な関係

我が家には二種類の歯磨き粉がある。ひとつは、某有名ブランドのホワイトニング効果があるという高級歯磨き粉。もうひとつは、ドラッグストアで「本日限り!」と赤札付きで山積みにされる庶民派歯磨き粉だ。 もちろ ...

エッセイ

瞬間の物語:写真が教えてくれる愛のかたち

桜の花びらが舞う中、赤ちゃんを高く掲げる父親の顔には、何とも言えない喜びが広がっている。そして赤ちゃんは——そう、赤ちゃんは何が起きているのかまったく理解していない。 「パパ、なんで僕を空中に投げ上げ ...

エッセイ

命の物語が交錯する車両の中で

市電に乗って、ふと思った。この日、この時間、この電車に乗り合わせたこと自体が奇跡だ。 がんが見つかり、自分の命が尽きるかもしれないと考えた瞬間、まず驚いたのは、過去から連綿と受け継がれてきた命の尊さだ ...

エッセイ

写真が教えてくれること

余命半年を告げられたとき、思い残すことがないようにしようと思った。そして、そこで挑戦を始めたのが、写真だった。 20代のころ、僕は写真に熱中していた。ファインダー越しに世界を見るのが楽しくて、時間を忘 ...

エッセイ

何気ない日常の、かけがえのなさ

日差しがあたたかい午後、近所を歩いていると、仲睦まじく散歩をする老夫婦の姿が目に入った。 男性が少し前を歩き、女性が少し後ろをついていく。ずっとそうしてきたのだろう。並んで歩いて会話を楽しめばいいのに ...

エッセイ

笑顔の力を、もう一度信じてみる

笑顔には力がある。 そんな当たり前のことを、僕が本当に実感したのはがんになってからだった。 入院中、辛いときこそ笑顔でいようと決めた。理由は単純で、なぜか笑顔になると気分が少し楽になったからだ。医学的 ...

エッセイ

「今」しかない世界で、何を急ぐのか

東京での仕事が始まり、月に一度ほど通うようになった。来るたびに思うのは、「都会には急いでいる人が多いな」ということだ。 写真に写るスーツ姿の彼も、きっとどこかへ急いでいるのだろう。会議に遅れそうなのか ...

エッセイ

生き残った意味を探して——がん患者として、今できること

しばらく更新が止まってしまっていたこのブログを、また書き始めることにした。 なぜか。 理由はいくつかあるけれど、一番大きいのは、「生き残った意味」を考えるようになったからだ。 末期がんから生還できたと ...